(5)ノイズ対策 - 電光掲示板制作ノート

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ノイズの原因と対策

電圧マージン

シフトレジスタ74HC595の電源電圧が5Vでありながら信号電圧はNucleoからの3.3Vが入力されている。これが極端に電圧マージンを少なくし、各種ノイズに弱い原因になっているように思う。

対応策としてマイコンボードの出力直後に7414シュミットトリガを2回経由することで、信号は変えずに電圧だけ5Vに変えることができる。またLED制御部の長大な配線ではノイズが生じやすいが、これとマイコンボードを直接繋げず7414を経由させることはマイコンボードの保護にもつながる。

クロストークノイズ

クロストークノイズについては、プリント基板とは異なり配線が離れており平行せず何度も交差する形となっていることから、今回のノイズの原因としては考えにくい。

反射ノイズ

反射は今回のノイズの原因として最も有力。本[1]に書かれた通り、終端のレシーバが74HC595というCMOS回路であり、この場合は「レシーバの入力インピーダンスが非常に大きいためドライバ側から見た伝送回路は遠端解放のように見え」る。プリント基板であれば「ほぼオープン反射」となる条件である。逆にドライバ出力端のマイコンボードは「出力抵抗が通常10Ω~20Ω」と見られ、「逆相の部分反射」をする。この反射は、マイコンボードの出力に不適切な電圧をかけて破壊する原因にもなっているかもしれない。

対応策として整合終端をする。本[1]によれば「1対1伝送方式の場合は近端あるいは遠端のいずれか一方で整合されていれば反射は抑制される」といい、ドライバ(マイコンボードの出力)側にダンピング抵抗を挿入することを推奨している。今回の電光掲示板回路では見方によってはマイコンボードとシフトレジスタ初段の1対1のSPI通信であるが、クロックやOE信号は延々と80cmに渡り共通なので1対多の通信だとみるべきである。村田製作所[2]によると、1対1以外の「配線の中間部に回路がつなが」るような信号伝送においてドライバ側で整合終端をすると「レシーバ側の反射は残るので、信号線の上に定在波が残り、配線の中間部では波形が崩れ」るという。そこでレシーバ側で「特性インピーダンスに等しい抵抗をグラウンドや電源に接続」して整合終端すると「定在波が無くなるので、配線の中間で信号を拾っても、きれいなパルス波形が得られ」る。終端に挿入する抵抗値はプリント基板の情報しか見つからなかったが、村田製作所[2]の「50~150Ω程度」などを参考に100ΩをGNDに繋いで使うことにした。

減衰

減衰は、今回の回路の信号線が80cm程度とデジタル回路のなかではかなり長い分類であるため、ノイズを引き起こす要因になっている可能性がある。実際の動作(図10)でも、左側の信号源から離れるほどノイズが目立つ傾向が確認できるため、減衰により信号の判別が困難になり表示ノイズが発生していることも考えられる。

減衰に対しても7414により信号を5Vにすることで対策できる。

トランジスタアレイのCOMMON端子

おそらくどこかのサイトで「トランジスタアレイのCOMMON端子は繋がなくてもよい」といった記述を見て配線を省略した記憶があった。ところが今になって調べると「せっかく用意されているものを使わないのはよほどの理由がある場合のみ」といった記述を見て、慌ててCOMMON端子をVccへ繋げることにした。

実装

/media/uploads/p4ken/common.jpg ↑SCK,RCK,Gの3線を100Ωで整合終端(写真左側)。トランジスタアレイのCOMMON端子をVccへ接続(白い電線)。配線漏れのGND端子もようやく配線した。

/media/uploads/p4ken/signal.jpg ↑6本の信号線をこのF446REから切断し、電線で外へ引き出す。これを7414経由でF303K8に繋げた。

プログラム

プログラムは2文字のころとあまり変わらずこちら

動作

/media/uploads/p4ken/nonoise.jpg 見事ノイズが消えた。ほかのいろいろな表示でもノイズが出ない。ただ自宅から大学まで自転車で1時間運搬したためかLEDマトリクスに接触不良のピンが1つできた。はんだ付けはできる範囲でし直したが効果はなく、パネルを上から強く押さえるとしばらくは正しく点灯しやすくなる。

/media/uploads/p4ken/f303k8.jpg そしてプログラムを横スクロール対応にしようと試行錯誤しているうちにNucleoボード左下のレギュレータ付近から煙が出た。Lチカのサンプルコードはまだ動くが数秒でレギュレータ付近が触れないほど熱くなってしまう。よく見るとレギュレータの真ん中あたりがポツんと膨らんでいる。電子部品のパッケージが最初からこのように膨らんでいるのは見かけないので、やはりレギュレータが破損したと見て間違いないだろう。実は既に2台のF446REを壊してしまっている。うち1台はMicroUSB端子の抜き差し中に破裂音とともに焦げ臭くなった。今回はレギュレータが原因らしいとはっきり分かった。出力ピンは7414に入力しているだけで過電流は考えにくいから、5Vの外部給電でUSBも繋ぐのが無理をさせてしまっているかなと思う。次回はフォトカプラでNucleoとLED側の電源系統を完全に分離してみる。

出典

[1]浜村博史(2014)絵で見る電磁ノイズの世界 原理から対策まで

[2]村田製作所 ノイズ問題を複雑にする要因 http://www.murata.com/ja-jp/products/emc/emifil/knowhow/basic/chapter03-p2

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